〈MDR〉ライプツィヒ平和革命30周年記念式典の中継映像(2019年10月)

2019年10月9日、ライプツィヒでいわゆる平和革命の30周年を祝う式典が開催された(→〈ライプツィヒ〉平和革命30周年記念式典のプログラム発表)。式典の様子はZDFでのテレビ中継に加え、MDRでストリーミング中継も行われ、アーカイブとしても見られるようになっている。

30 Jahre Friedliche Revolution - Festakt im Gewandhaus Leipzig
(MDR+、2019年10月9日)

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2019年10月9日 11:00~ ライプツィヒ、ゲヴァントハウス
アンドリス・ネルソンス指揮
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

メンデルスゾーン:『夏の夜の夢』序曲

1989年の映像
演説
 ライプツィヒ市長 ブルクハルト・ユング
 ザクセン州首相 ミヒャエル・クレッチマー

マーラー:交響曲第1番初稿より「花の章」

民主主義への演説
 連邦大統領 フランク=ヴァルター・シュタインマイアー
 公民権運動家 フライア・クリアー
パフォーマンス『世代間の対話』(?)

欧州の歌
ドイツ国歌

流れとしては、最初にネルソンスとGHOがメンデルスゾーンを演奏し、いったん退場。スクリーンで当時の映像の放映、さらにスピーチがあって、改めてオケと指揮者が入場してマーラーを演奏。そのままオケはステージに残り、大統領その他の演説、会場内に配置された発言者からの短いスピーチによるパフォーマンス(「世代間の対話」Dialog der GenerationenというタイトルはGHOのサイトにあったが、他にソースがなく不明)。最後にもう一度ネルソンスが入場し、欧州の歌とドイツ国歌を演奏。これをもって閉式という流れだった。

ネルソンスは5日までボストンでの演奏会があったので、それからすぐこちらに来てのリハーサルだったことになる。演奏時間は全体からするとごく短いとはいえ、この場でやるには2曲ともそれなりの長さがある。いずれもライプツィヒにとって重要な作曲家ではあるものの、曲自体それほど祝典的とか、狭い意味で革命ゆかりの曲とかそういうわけでもない。聴けて嬉しいけれども、何故この2曲なんだろうなというのは不思議ではあった。花の章は今月後半の定期演奏会の演目だから、ついでというのもあるのだろうが。
メンデルスゾーンの速い部分のアンサンブルなど、完璧とはいかなかったものの、GHOのクリアでありつつ柔和なサウンドを存分にきかせ、マーラーは優美なソロを中心にほどよい甘美さをもって、夢見るような時間を演出していた。後述のように全体としてはけっこう重い内容で気が休まらない中で、この音楽だけは会場にとって癒しの一時になっただろう。

2曲やった後のスピーチその他がおよそ1時間20分に及び、ステージに残るオケは大変だ。ドイツ人というのは概してこういう演説が好きだし、話題も1989年に直接関係することだけでなく、現代の政治社会道徳問題(移民、気候変動etc.)をてんこ盛りにしてくる。それも当然「公に正しいとされている主張」しか語られないから、はっきり言ってあまり面白くはない。会場からのスピーチでもその手の活動家的な人がけっこういたようで、もはや平和革命ほぼ関係ない、というところまで話題が流れ、ようやく最後の歌となって指揮者と追加の奏者がステージへ。

欧州の歌とされているのは第九の「歓喜の歌」で、公式には歌詞はないらしくオケのみの演奏。編曲はカラヤンだそうだ。第4楽章のアレグロ・アッサイ、ヴァイオリンによるテーマの前に短い前奏を付け、次のトゥッティまでの主題2回分を基にしていて、オーケストレーションは元のものをかなり踏まえていると思われる。ただテンポはずっと遅く、トゥッティの弦楽器はレガート、トランペットやティンパニはかなり控えめになっている。会場はこの曲で起立していたので、国歌と同じような扱いなのだろう。フリーメイソンのドイツ語詩でドイツ人作曲、元ナチ党員オーストリア人の編曲によるヨーロッパ賛歌というのも不思議な話だが(他の国はいいのだろうか、これ)。
そのまま続けてドイツ国歌で、こちらは参列者も唱和するのだが、ト長調での演奏だった。一般人が歌うには少々高すぎると思うのだが……。ちなみにハイドンの原曲(弦楽四重奏)がト長調で、ドイツ政府の公式サイトに載っている音源は変ホ長調だった。

ネルソンスは服装も普段と同じものだし、別に何か挨拶などするわけでもない。それこそマズアのような人なら自らマイクを持って政治スピーチするところだろうが、ネルソンスはそういうタイプでもない。もちろん自身が「東」の出身であり、カペルマイスターとしてライプツィヒの歴史への思いというのもあるには違いないと思うが。
ライト付きの譜面台のためいつもよりちょっと低めで、そこは若干やりづらそうにも見えたが、左タクトも交えながら楽しそうな指揮ぶり。花の章では入場してオケに向き直ってからばらばらページをめくって探していたり……。最後の国歌の後、指揮者とオケが立って会場を向いたままなので拍手もそのまま続き、特に閉会のアナウンスもないので微妙な流れ解散という感じになっていた。あれは指揮者が堂々と退場してオケも引っ込めばいいのだろうが、そこまで決められてはいなかったのか。
まあ、現代ドイツ政治における道徳的縛りの強さ――良くも悪くも――を垣間見せるこの式典の中で、マイペースなネルソンスには正直ちょっと和んだ。

それと最初のメンデルスゾーンで気になって仕方なかったのが、彼が右手首に付けている蛍光グリーンのバンド。ものすごく目立つ。

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何かシンボリックなものなのかなと考えたが、どうも「仮」という感じの素材らしく見えるし、他の誰も付けていない。何か字が入っているようでもある。次にマーラーで出てきたときには無くなっていた。あれは一体何だったのだろう。まさか関係者用か何かのを外し忘れてたとか、ないとは思うけれども……。何か意味があったなら知りたい。

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