〈WGBH〉BSO タングルウッド2019 オープニングナイト マラ5、モーツァルト(2019年7月)

※7月2日の記事に追記の上再公開。

オープニング・ナイト
2019年7月5日 タングルウッド、クーセヴィツキー・ミュージック・シェッド
アンドリス・ネルソンス指揮
ボストン交響楽団
エマニュエル・アックス(Pf)

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
マーラー:交響曲第5番

Opening Night at Tanglewood!
(WGBH 2019年7月5日 20:00~ライブ)

プログラムノート
モーツァルト
マーラー

6月末のライプツィヒ(ローゼンタール)での演奏会を終えて1週間、ネルソンスはアメリカに飛び、タングルウッド音楽祭の開幕コンサートを指揮する。例年通り全公演をWCRBがラジオ中継。
マラ5は昨年11月にボストンでも演奏しているもの(→〈WGBH〉BSO マーラー5番、HKグルーバー(2018年11月))。ネルソンスの最近のマーラー演奏は本当に面白くて、この5番も例外ではなかったので、今回も非常に楽しみ。この日を皮切りにネルソンスは7月中だけでTMC管を含む11公演と、室内楽やパレード等にも登場する。
アーカイブはないが再放送は恐らくあり(日程はTwitterで速報予定)。放送後に追記予定。


(以下放送後追記)
前半のモーツァルト、ネルソンスとアックスは何度か共演がある。編成は多少小さめにしているだろうか。端正な中に繊細なエモーションを織り込んだ、丸みのあるアックスの音色は、ネルソンスによるモーツァルトのスタイルと好相性だ。テンポはゆったりした方で、叙情的で優美な印象を与える。

マラ5は昨年秋に上述のBSOに加えGHOとも演奏し、ツアーにも持って行っているが、毎回けっこう違う雰囲気があって面白い。今回の場合、タングルウッドの常というか、全体に多少開放的で大らかな感じがある。トランペットのロルフスが珍しく複数回目立つミスをしていたりもする。ただシーズンで既に仕上げた曲でもあり、解釈及びオケとの意志疎通という点での完成度は高い。
半野外ホールでの収録だが、オケ内部のサウンドがかなりクリアに捉えられていて、内声や対旋律はもちろんだが、一パート内の音の重なり具合なども見えることがあり、スケルツォやフィナーレのようなリズムが絡み合う部分では特に興味深い。
金管、主にトランペットがやや突出気味なのは、昨年11月の演奏でもそうだったし、2015年のマラ6はこんなものではなかったので(生で聴いても同様)、意図的なのだろう。

基本的な方向性は昨年の演奏とそう変わらないと思われ、全体に一種の物語性がある点も同様。ただ、トランペットが上で引っ張っているというのもあるが、今回はもう少し楽観性が感じられ、第1、2楽章においてもこの動的かつ叙情的なドラマは比較的明るい。この情熱が後にきちんと成就していくことが既に示唆されているとも言えるだろうか。
スケルツォの色とりどりでカオス気味な世界、BSOの各メンバーがけっこう自由に動き回っているが、ネルソンスによるマーラーのスケルツォで時々あるような迷走感はない。ひところは、ディテールに集中しすぎて統一感を欠くと言われたりもした彼のマーラーだが、最近は特に手兵とやるときには、ドラマ全体とのバランスがとても良くなったと感じる。

アダージェットは時間にして10分16秒、ネルソンスの比較的最近の演奏の中では速い方。実際聴いていても極端な溜めは少なく、全体に緊張感よりはゆったりとした呼吸で無理なく流れている(個人的には、2015年頃のあの止まりそうに遅い演奏も懐かしくなくもないが)。地上的で感覚的、のびやかで豊かなエモーションが、次楽章にそのまま接続している。
フィナーレもあまり奇矯さを出さず、先走ることもなく、尖らず快活なロンド。ボストンでの演奏ほど細かく作り込まれてはいないようで、素直ですっきりとした印象を受けた。ボストンでやるよりもポジティヴな結末に思えるのは、やはりタングルウッドという環境のなせるわざなのだろうか。あまりそういう先入観で聴かないようにはしているつもりだが、ネルソンス自身がこの環境の重要性をよく口にしているし、否定し難い一要素ではあるのかもしれない。

ネルソンスのマラ5は、2015年の春以来BPh、LFO、LFOのツアー、BSOにGHOとけっこうな数の実演、録音が積み重なっており、つくづく色々な演奏があったなあと思い返す。オケ自体の違いに加えて手兵か客演か、本拠地かツアーか、ネルソンスが近い時期に振っていた曲など、様々な要素がある。それぞれに魅力があるのだが、ショスタコなどと違って変動が大きく、いまだにこれだというのがある感じではない。いつか特定のオケと一つの全集を出して「これぞネルソンスのマーラー」となる時は来るのだろうか。

なお、以下のサイトでネルソンスの短い電話インタビューが聞ける。特に目新しい話はないが。
In Sixth Season With BSO, Andris Nelsons Ready For Tanglewood Open
(Alan Chartock; WAMC、2019年7月5日)

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