〈DVD〉GHO カペルマイスター就任記念 悲愴、モーツァルト40番

2018年3月15・16日 ライプツィヒ、ゲヴァントハウス
アンドリス・ネルソンス指揮
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

モーツァルト:交響曲第40番
チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」

Accentus Music ACC10445 (Blu-ray), ACC20445 (DVD)

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リリース記事→〈速報・リリース〉DVD GHO カペルマイスター就任記念 悲愴、モツ40番(2019年2月発売)

ネルソンスのカペルマイスター就任と、ゲヴァントハウス管の創立275周年の祝祭週間からは、既にメンデルスゾーン3番がDVDとして発売され、ブルックナー7番(とジークフリート葬送)がブルックナー全集の一環としてCD化済。一連のコンサートの最後のプログラムとなったこの悲愴も既にArte.tv(→〈Arte〉GHO 悲愴、モツ40、ラルヒャー初演(2018年3月))とNHKBS(→〈NHKBS〉GHO 悲愴、モーツァルト40番(2018年3月))で放映されている。このDVDもNHKが製作に入っていて、恐らく後者とほぼ同じ映像だと思うが、確認はしていない。
カメラワークはネルソンスを中心にいい表情を捉えてくれている。それと映す楽器がけっこう独特というか、ここでそれを抜くか! というショットが時々ある。対旋律や刻みへのフォーカスなど、オケの内部から演奏を体験しているような気分になって面白い。

NHK放映時と同様、本来コンサートの1曲目についていたラルヒャーの「キアズマ」という初演曲は、映像ではカットされている。理由は明らかではないが、そのせいでこの曲に使われた大量の打楽器類が、映像内では使われることがないまま映り込むことになっている。

モーツァルトにおけるネルソンスの指揮スタイルは、ショスタコなどを振るときとはかなり違う。自ら操舵するというよりは、案内人のようなイメージだ。あまり拍を取らず、基本の進行はオケの自律性に任せ、要所要所を全身の動きや表情で豊かに形作る。タクトを完全に下ろしてしまうような箇所もいくつかある。その中でも適度に引き締まったサウンドを自発的に作り出す、GHOの経験とセンスを信頼してのものだろう。
第2楽章はパリで実演を聴いてかなり遅く感じたのだが、ここではそれほどでもない。それでもかなりディテールにこだわって細やかに造形しているのが伝わるだろう。全体的に自然体というよりは、こまごまと手をかけた作りのモーツァルトであることが視覚的にもわかる。

メインが悲愴。確か他の記事でも書いたように、20代からチャイコフスキーを得意としてきたネルソンスは、ここ1年ほどでまた新しい段階に進みつつあるように思う。BSOとの演奏もそれを示しているが、この悲愴もその一端を感じられる素晴らしい演奏だ。
GHOの全員が100%以上の前のめりで表現する(コンマスのブロイニンガーはいつも通りの大熱演だが、他の面々もかなりのもの)、テンポもデュナーミクも激しく起伏の大きな音楽でありながら、野放図な熱狂やセンチメンタリズムに陥ることなく、全体にしっかりと芯が通ったものになっている。GHOの深く翳りのあるサウンドを、限界まで駆動させることで生まれるインテンシヴな音が、ある意味「好きなだけ鳴らせる」BSOとはまた違った重みのドラマを作り出している。

なお、NHK放映時の記事でも書いたが、実際の演奏会では第3楽章の後に拍手が起こっており、映像ではその部分がカットされている。第4楽章後の長い沈黙は実際にこの通りだった(以上は私が会場にいて体験したのではなく、上述のArte.tv中継との比較による)。

Accentusのディスクの常として、付録で他のディスクのトレイラーが収められていて、ここでは上述のGHOメンデルスゾーン3番と、ルツェルン祝祭管とのマーラー5番の紹介動画が見られる。特に前者はトレイラーといっても、市庁舎での就任式やネルソンスの短いインタビュー、舞台裏の様子など、カペルマイスター就任をめぐる色々な場面を見せた後、さらにメンデルスゾーンの第2楽章の全体を聴かせるという、とても充実したものになっている。

*  *  *

さて、以下音楽とは関係ない話。ジャケット写真がネルソンスの指揮姿のアップだが、よく見るとこれは収録されているコンサートの時のものではない。映像中のネルソンスが付けていないはずのブレスレットと指輪が写っている。Accentusでは前にもこういうことがあった(→ルツェルン祝祭管とのマラ5DVD)。
となるとこれはいつの写真なのか。気になりだすと何とかして解明せずにはいられない性格なので、調べてみた。写真のクレジットはJens Gerber。髭があるので2016年秋以降だが、その期間のGHOとの映像は2016年12月の第九2017年6月の新世界2018年のメンデルスゾーンのいずれも、指輪の位置などが違うので除外。一致が確認できたのはGHOの公式サイトにも掲載されている、以下の写真のみだった。

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これらもJens Gerberのクレジットで、2017年5月11~12日の撮影らしい。該当日のメインはブルックナー4番。今回の悲愴のジャケット写真も恐らく、これと同じ機会に撮られた可能性が高いと思われる。

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