〈MDR Kultur〉GHO シューマン2番、イタリア、ルイ・ブラス(2019年1月)

※1月5日の記事に追記の上再公開。

MDR KULTUR im Konzert: Live aus dem Gewandhaus Leipzig
MDR Kultur(ドイツ) 2019年1月11日 20:05~(ライブ)

2019年1月11日 ライプツィヒ、ゲヴァントハウス
アンドリス・ネルソンス指揮
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

メンデルスゾーン:序曲「ルイ・ブラス」
シューマン:交響曲第2番
メンデルスゾーン:交響曲第4番「イタリア」

新年最初のライプツィヒにおけるネルソンスとGHOの演奏会がラジオ中継される。彼らは1月にこのプログラムともう一つ、シューマン3番とピアノ協奏曲(ソロはグリモー)のプログラムを本拠地で演奏した後、ヨーロッパ数都市へのツアーを行う。このうち、ウィーン公演の今回と同じプログラムの方もORFで放送予定があるようだが(→〈ORF〉GHOウィーン公演 シューマン2番、イタリア(2019年1月))、もう一つの方は今のところ見つかっていない。できれば2種類とも聴きたいところなのだが。
ネルソンスのメンデルスゾーンは、2018年2月のカペルマイスター就任公演で素晴らしい3番をきかせており(→〈GHO〉就任記念演奏会 スコットランド、ベルクVn協、シュライアーマッハー)、相性のいい作曲家だと思っているので楽しみだ。

曲順のバランスが変な感じだが、GHOのサイトでもこうなっているので、これで正しいらしい。
放送後に詳しく書く予定。オンデマンドの掲載があるかどうかは不明。
(1月12日追記)オンデマンド公開、上記リンクから聴取可。


(以下放送後追記)
最初がルイブラスで、ノーブルなドラマを無難に表現しているかなというところ。弦楽器の細かな筆遣いなどはさすがに聴きごたえがある。シンフォニーとの関係ではちょっと曲の方向性が違うような気がしないでもなかった。

序曲の後、前半にシュー2でイタリアがメインというのは変なバランスで面白い(似た主題を持つシュー2の4楽章とイタリアの1楽章が続くことになるが、意識したかどうかは不明)。とはいえ、メインっぽい演奏になっていたのはやはりシューマンの方で、スケールの大きさと、細部の鮮やかで繊細な作りとのバランスが素晴らしい。この演奏からは、シューマンのオーケストレーションに難があるなどとは全く信じられない。LVZが批評に書いていた通り「シューマンの交響曲に必要なのは[マーラー等がしたようなオーケストレーションの]修正ではなく、作品を信頼してくれる指揮者なのである――ネルソンスのように」。

そのシューマン第1楽章、序奏全体がワンフレーズの旋律のように大きな弧を描いて始まる。主部はそれほど速くはなく、大きく緩急を動かすこともないが、アクセントというか音の圧力の変化が、ちょっと躁鬱的な揺らぎを与えている。じっとしていられないというような感じで、要所での追い込みも含め、テンポというよりテンポ感のコントロールがうまい。管の突っ込むタイミングもセンスがよく、若々しい前向きさを加えている。
第2楽章もそれほど飛ばしてはいないが、やや前のめりのヴァイオリンが雰囲気を出している(たまに縦がずれるが)。その中でもこまごました音符が一つも転がらずに、一つ一つ生気を持って鳴らされていき、迫力あるスケルツォ。トリオとのメリハリもいい。

第3楽章はいかにもネルソンスらしく遅いテンポを取るが(11分36秒、ちなみにマズアLPOは約8分、最近のティーレマンSKDでも10分台前半)、木管などを存分に、かつ自然に歌わせられているので無理は全く感じないし、団員としても心地いいのではないだろうか。同じ緩徐楽章でも例えばメンデルスゾーンと比べてみると、ここでは全体的にもう少し粘りがあり、ぐっと深いところをすくい上げるような歌い方はブルックナーなどに少し近いかもしれない。ロマンティークの中でも甘美さではない、夢想というより瞑想的、思索的な面が感じられる。
フィナーレは譜面を見ていると確かに、低弦の動きなど綺麗にまとめるのが難しそうな音符が重なっている。ネルソンスはそういうちょっとごつごつしたところを際立たせはしないまでも、ドラマの緩急に上手く利用し、リズムの面白さなどもきちんと伝わるように仕上げているように感じた。

イタリアは先のタングルウッドでBSOと演奏している(→〈WGBH〉BSO タングルウッド イタリア、チチェスター詩篇、ベトPf協1番(2018年7月))。比べた感じは以前の3番のそれに近い。ただイタリアの場合、演奏時間には大きな差はなかった。BSOとの演奏も遅めのテンポの中で丁寧にニュアンスを作っているが、より明瞭でわかりやすい印象があった。GHOによる表情の変化はそれに比べるともう少し繊細で微妙である。

両端楽章はBSOより心持ち速めだが、それ以上に前向きなスピード感がある印象。第1楽章は、BSOでは省略していた提示部リピートを行っている(この1カッコがわりと好きなので、これは嬉しい)。フィナーレはなかなかドラマティックで、舞曲という感じはあまりない。ここもそれほど速いわけではないものの、音の勢いでうまく追い込んでいる。
BSOのときほど落ち着いた、おおらかという感じではないが、鋭くキレがあるというより、音符の一つ一つが表情豊かでしなやかな感触。明るいところよりは、少し影の差すフレーズの方にネルソンス節が発揮される。

中間楽章、特に第2楽章は遅めのテンポ(7分10秒ほど)で、各楽器間の息の合ったつながりが長いフレーズを紡いでいく。その中でGHOの持つ少し翳りのある音色がよく活かされている。小さな花々の中を一つ一つ覗き込んでいくように、隅々まで陰影を付けながらも、自然体で神経質にならないところがいい。
よりドラマティックな3番や前半のシューマンに比べると、一つの(どちらかというと小ぢんまりとした)庭園のようで、全体のうねりのようなダイナミズムは少ない代わりに、ディテールが自然に表情付けられていて美しい。スコアを見ていると、書いてあるより少しレガート気味だったり、語尾が柔らかくて僅かに長めであったりというような形で、優しい雰囲気と息の長さが促進されているように感じた。

今回のシューマンとメンデルスゾーンのいずれにも言えるが、ネルソンスの解釈は、フォルムを保ちつつも、絶え間なく動き続ける感情の波が生き生きとそこから溢れ出してくる、というような印象がある。彼の資質的に、古典よりは(後期)ロマンティークに傾くが、そのバランスもいいところで保たれている。端正という感じではないが響きの構成は的確、どのフレーズも雄弁でよく動くが、全体の統一的な色というのはしっかりある。
もちろんGHOにすればもっとも近しい音楽の一つだろうし、ネルソンスのロマン的感性に対して、彼らのクラシカルな感覚が音楽に推進力を与えているのかもしれない。ネルソンスもいつも通りかなり彼らに自由を与え、各自の呼吸を尊重して演奏させているようで、自然な流れや生気が生まれている。やはりこの辺の時代は彼と相性が良さそうだし、特にGHOとの演奏は今後も楽しみだ。個人的にはメンデルスゾーンの5番が早く聴きたい(ネルソンスとは宗派が違いそうだが……)。


【追記】2019年2月22日
この録音がWDRで放送され、30日間オンデマンドで聴くことができる。
WDR 3 KONZERT - 20.02.2019 GEWANDHAUSORCHESTER LEIPZIG - ANDRIS NELSONS

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