アンドリス・ネルソンス 今後のスケジュール

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Andris Nelsons Fan's Information -unofficial

アンドリス・ネルソンスの今後の出演予定です。(随時更新中)
※非常に長いです。その他の更新記事は一つ下から始まります。PCの方は左の「最近の記事」からご覧ください。
※不確かな情報には(?)をつけています。

ボストン交響楽団
【シーズン】シンフォニーホール
2019年
〈ライプツィヒ週間 in Boston〉
10月29日 G.カピュソン(Vc) ※ゲヴァントハウス管との合同演奏
 マーラー:交響曲第1番初稿より「花の章」、シューマン:チェロ協奏曲
 ワーグナー:『さまよえるオランダ人』序曲、メンデルスゾーン:交響曲第3番「スコットランド」
10月31日、11月2日 ※ゲヴァントハウス管弦楽団との合同演奏
 ラトリー(Org)、フェリッロ(Ob)、スヴォボダ(Fg)、エルベン(Vn)、ギガー(Vc)
 R.シュトラウス:管弦楽とオルガンのための祝典序曲
 ハイドン:オーボエ、ファゴット、ヴァイオリン、チェロと管弦楽のための協奏交響曲
 シェーンベルク:浄められた夜、スクリャービン:交響曲第4番「法悦の詩」
11月1日 シンフォニー・ガラ ※ゲヴァントハウス管弦楽団との合同演奏
 ラトリー(Org)、フェリッロ(Ob)、スヴォボダ(Fg)、エルベン(Vn)、ギガー(Vc)
 R.シュトラウス:管弦楽とオルガンのための祝典序曲
 ハイドン:オーボエ、ファゴット、ヴァイオリン、チェロと管弦楽のための協奏交響曲
 スクリャービン:交響曲第4番「法悦の詩」

11月7~9・12日 内田光子(Pf)
 ジョラス:Bachwilleからの手紙(初演、共同委嘱作品)
 ラヴェル:ピアノ協奏曲、ショスタコーヴィチ:交響曲第12番「1917年」
11月14~16日 アンスネス(Pf)、キューマイヤー(Sp)
 グリーグ:ピアノ協奏曲、マーラー:交響曲第4番
11月21・23・26日 ロザコヴィッチ(Vn)、タングルウッド祝祭合唱団
 Maskats:”My River runs to thee...” エミリー・ディキンソンへのオマージュ(初演、GHOとの共同委嘱作品)
 チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲、グリゴリェヴァ:On Leaving(無伴奏合唱)
 ショスタコーヴィチ:交響曲第2番「十月革命に捧げる」
11月22日 カジュアルフライデー ロザコヴィッチ(Vn)、タングルウッド祝祭合唱団
 Maskats:”My River runs to thee...” エミリー・ディキンソンへのオマージュ
 チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲、ショスタコーヴィチ:交響曲第2番「10月革命に寄せて」

2020年
1月23~25日
 バーバー:メデアの瞑想と復讐の踊り、ショスタコーヴィチ(バルシャイ編):室内交響曲
 ドヴォルジャーク:交響曲第9番「新世界より」
1月28日 ブロンフマン(Pf)
 ショスタコーヴィチ(バルシャイ編):室内交響曲、ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番
 ドヴォルジャーク:交響曲第9番「新世界より」
1月30・31日 ブロンフマン(Pf)
 バルトーク:管弦楽のための協奏曲、モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番
 ラヴェル:『ダフニスとクロエ』第2組曲
4月2~4日 ティボーデ(Pf)
 H.K.グルーバー:ウィーンの森の物語(アメリカ初演、GHOとの共同委嘱作品)
 ガーシュウィン:ピアノ協奏曲ヘ調、ラフマニノフ:交響曲第3番
4月9・11日 マギー(Sp)、カウフマン(Tn)、デ・ヨング(Ms)、グロイスベック(Bs)
 ワーグナー:『トリスタンとイゾルデ』第3幕
4月17日 デジャルダン(Vc)、*タングルウッド祝祭合唱団
 サン=サーンス:チェロ協奏曲第1番、バルトーク:管弦楽のための協奏曲
 *(コンサート後)ラフマニノフ:徹夜祷(晩祷)※タングルウッド祝祭合唱団50周年記念
4月18日 デジャルダン(Vc)
 バルトーク:管弦楽のための協奏曲、サン=サーンス:チェロ協奏曲第1番
 ラヴェル:『ダフニスとクロエ』第2組曲


2022年5月(?)
プログラムA
 シュトラウス:『サロメ』より七つのヴェールの踊り、『ばらの騎士』組曲、英雄の生涯
プログラムB
 シュトラウス:ドン・ファン、ブルレスケ、イタリアより
(ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団との共通プログラム)

2022年5月(?)
プログラムA
 シュトラウス:ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯、四つの最後の歌
 同:ツァラトゥストラかく語りき
プログラムB
 シュトラウス:『影のない女』幻想曲、アルプス交響曲
(ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団との共通プログラム)


【北米公演】
2019年
11月18日 キューマイアー(Sp)、アンスネス(Pf)
 グリーグ:ピアノ協奏曲、マーラー:交響曲第4番

2020年
4月14日 ティボーデ(Pf)
 H.K.グルーバー:新作(ニューヨーク初演)、ガーシュウィン:ピアノ協奏曲へ調
 ラフマニノフ:交響曲第3番
4月15日 マギー(Sp)、カウフマン(Tn)、グロイスベック(Bs) ほか
 ワーグナー:『トリスタンとイゾルデ』第3幕


【ツアーその他】
2020年2月6~16日 ソウル、台北、香港、上海
プログラムA ブロンフマン(Pf)
 バルトーク:管弦楽のための協奏曲、モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番
 ラヴェル:『ダフニスとクロエ』第2組曲
プログラムB ブロンフマン(Pf)
 バーバー:メデアの瞑想と復讐の踊り、ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番
 ドヴォルジャーク:交響曲第9番「新世界より」

2020年
2月6日 ソウル、アーツセンター
2月7日 ソウル、アーツセンター
2月9日 台湾、ナショナルコンサートホール
2月10日 台湾、ナショナルコンサートホール
2月12日 香港、文化センター A
2月13日 香港、文化センター B
2月15日 上海、オリエンタルアートセンター A
2月16日 上海、オリエンタルアートセンター B

2021年8~9月(?)
プログラムA
 ベルク:ヴァイオリン協奏曲、マーラー:交響曲第5番
プログラムB
 ストラヴィンスキー:ペトルーシュカ(1947年版)
 ラヴェル:ピアノ協奏曲、ラ・ヴァルス


ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
【シーズン】ゲヴァントハウス
2019年
10月17・18日 カピュソン(Vc)
 マーラー:交響曲第1番初稿より「花の章」、シューマン:チェロ協奏曲
 ワーグナー:『さまよえるオランダ人』序曲、メンデルスゾーン:交響曲第3番「スコットランド」
12月5・6・8日 レーピン(Vn)
 ワーグナー:『ニュルンベルクのマイスタージンガー』前奏曲
 グバイドゥーリナ:ヴァイオリンとオーケストラのための対話「Ich und Du」
 ブルックナー:交響曲第2番(1877年第2版、2007年WIlliam Carragan版)
12月19・20日 ハーデンベルガー(Tp)
 ムソルグスキー:『ホヴァーンシチナ』よりモスクワ川の夜明け(ショスタコーヴィチ版)
 ヴァインベルク:トランペット協奏曲、チャイコフスキー:交響曲第4番

2020年
3月26・27・29日
 ワーグナー:『リエンツィ』序曲、H. K. グルーバー:ウィーンの森の物語(初演、BSOとの共同委嘱作品)
 ブルックナー:交響曲第1番(ウィーン版)

〈ボストン週間 in Leipzig〉
4月30日・5月1日 バティアシヴィリ(Vn)
 Maskats:”My River runs to thee...” エミリー・ディキンソンへのオマージュ(ヨーロッパ初演、BSOとの共同委嘱作品)
 ドヴォルジャーク:ヴァイオリン協奏曲、バルトーク:管弦楽のための協奏曲

5月7・8日 ハーデンベルガー(Tp)
 H. K. グルーバー:エアリアル、R.シュトラウス:英雄の生涯
5月14・15・16日
 ベートーヴェン:交響曲第5番、R.シュトラウス:イタリアより

〈バッハフェスト〉
6月21日 ※トーマス教会
 ランツハーマー(Sp)、ヴォンドゥング(Alt)、コールヘップ(Tn)、ストラジャナツ(Bs)
 MDR放送合唱団
 バッハ:ミサ曲ロ短調

〈Klassik Airleben〉※Rosental
6月26・27日 ペレチャッコ(Sp)、ブレスリク(Tn)、アルコナ(司会)
 J.シュトラウス:『こうもり』より、レハール:『メリー・ウィドウ』『微笑みの国』より


〈マーラー・フェスティヴァル〉
2021年
5月13・14日 ファン(Sp)、フィンク(Alt)、MDR放送合唱団
 マーラー:交響曲第2番「復活」
5月21・23・24日
 ウォール、ワーグナー、ファン(Sp)、ブラウン、フィンク(Ms)、チェルノフ(Tn)、エレート(Br)、バス未定
 MDR放送合唱団
 マーラー:交響曲第8番


2022年5月(?)
プログラムA
 シュトラウス:『サロメ』より七つのヴェールの踊り、『ばらの騎士』組曲、英雄の生涯
プログラムB
 シュトラウス:ドン・ファン、ブルレスケ、イタリアより
(ボストン交響楽団との共通プログラム)

2022年5月(?)
プログラムA
 シュトラウス:ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯、四つの最後の歌
 同:ツァラトゥストラかく語りき
プログラムB
 シュトラウス:『影のない女』幻想曲、アルプス交響曲
(ボストン交響楽団との共通プログラム)


【ツアー・他都市】
2019年
〈秋のヨーロッパツアー〉
プログラムA カピュソン(Vc)
 マーラー:交響曲第1番初稿より「花の章」、シューマン:チェロ協奏曲
 ワーグナー:『さまよえるオランダ人』序曲、メンデルスゾーン:交響曲第3番「スコットランド」
プログラムB ブッフビンダー(Pf)
 ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番、シューベルト:交響曲第8番「グレート」

10月19日 ウィーン、楽友協会 A
10月20日 ウィーン、楽友協会 B
10月21日 ルガーノ、アルテ・エ・クルトゥラ B
10月23日 ルガーノ、アルテ・エ・クルトゥラ A
10月24日 シュトゥットガルト、リーダーハレ A


〈ボストン公演〉ボストン、シンフォニーホール
10月27日 カヴァコス(Vn)、カピュソン(Vc)
 ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲、シューベルト:交響曲第8番「グレート」
10月29日 カピュソン(Vc)
 マーラー:交響曲第1番初稿より「花の章」、シューマン:チェロ協奏曲
 ワーグナー:『さまよえるオランダ人』序曲、メンデルスゾーン:交響曲第3番「スコットランド」

10月31日・11月2日 ※ボストン交響楽団との合同演奏
 ラトリー(Org)、フェリッロ(Ob)、スヴォボダ(Fg)、エルベン(Vn)、ギガー(Vc)
 R.シュトラウス:管弦楽とオルガンのための祝典序曲
 ハイドン:オーボエ、ファゴット、ヴァイオリン、チェロと管弦楽のための協奏交響曲
 シェーンベルク:浄められた夜、スクリャービン:交響曲第4番「法悦の詩」
11月1日 シンフォニー・ガラ ※ボストン交響楽団との合同演奏
 ラトリー(Org)、フェリッロ(Ob)、スヴォボダ(Fg)、エルベン(Vn)、ギガー(Vc)
 R.シュトラウス:管弦楽とオルガンのための祝典序曲
 ハイドン:オーボエ、ファゴット、ヴァイオリン、チェロと管弦楽のための協奏交響曲
スクリャービン:交響曲第4番「法悦の詩」


〈バーデン・バーデン夏の音楽祭〉バーデン・バーデン、祝祭劇場
2020年
7月3日
 ブルックナー:交響曲第8番
7月4日 ランツハーマー(Sp)、フォンドゥング(Alt)、コールヘップ(Tn)、ストラジャナッツ(Bs-Br)、MDR放送合唱団
 バッハ:ミサ曲ロ短調
7月5日 ペレチャッコ(Sp)、ブレスリク(Tn)
 バーデン・バーデン・ガラ
 J.シュトラウス:『こうもり』より、レハール:『メリー・ウィドウ』『微笑みの国』より、ほか


〈ツアー〉(?)
2020年
9月8~10日
 ワーグナー:『タンホイザー』より序曲(パリ版)とバッカナール
 ベートーヴェン:交響曲第8番 ほか

11月14~27日
プログラムA ムター(Vn)、ミュラー=ショット(Vc)、トリフォノフ(Pf)
 ベートーヴェン:三重協奏曲、交響曲第3番
プログラムB
 ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番、交響曲第6番「田園」
プログラムC
 ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲、交響曲第7番

2021年
2月 日本ツアー


客演オーケストラ
【ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団】
〈ニューイヤーコンサート〉ウィーン、楽友協会
2019年
12月30日 プレビューコンサート
12月31日 ジルヴェスターコンサート
2020年
1月1日 ニューイヤーコンサート

2020年
〈ベートーヴェン・ツィクルス〉
I. 交響曲第1番、第2番、第3番
II. 交響曲第4番、第5番
III. 交響曲第6番、第7番
IV. 交響曲第8番、第9番

A.交響曲第8番、第3番

パリ、シャンゼリゼ劇場
 I. 2月25日 II. 2月26日 III. 2月28日 IV. 2月29日(フランス放送合唱団)
 ダッシュ(Sp)、ロンベルガー(Alt)、フォークト(Tn)、グロイスベック(Bs)
ケルン、フィルハーモニー
 3月1日 A
ハンブルク、エルプフィルハーモニー
 I. 3月3日 II. 3月4日 III. 3月6日 IV. 3月7日*(NDR/WDR放送合唱団)
 *9番はマーラー編曲版
 クロウ(Sp)、ロンベルガー(Alt)、トーマス(Tn)、未定(Bs)
ミュンヘン、フィルハーモニー・イン・ガスタイク
 I. 3月9日 II. 3月10日 III. 3月11日 IV. 3月12日(バイエルン放送合唱団)
 クロウ(Sp)、ロンベルガー(Alt)、トーマス(Tn)、未定(Bs)
バーデン・バーデン、祝祭劇場
 3月14日 A
ウィーン、楽友協会
 I. 5月23・24日 II. 5月27・28日 III. 6月3・4日 IV. 6月6・7日(ウィーン楽友協会合唱団)
 クロウ(Sp)、ロンベルガー(Alt)、フォークト(Tn)、グロイスベック(Bs)


【アムステルダム・ロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団)
2020年
1月16日 ブリュッセル、パレ・ド・ボザール
1月17・19日 アムステルダム、コンセルトヘボウ
ハーデンベルガー(Tp)、エマール(Pf)、オランダ放送合唱団
 ベートーヴェン:「プロメテウスの創造物」序曲、ディーン:Dramatis Personae
 スクリャービン:プロメテウス


〈CD感想〉WPh ベートーヴェン交響曲全集 7・8番

ネルソンスとウィーンフィルのベートーヴェン全集、DLでなく現物をしかも海外サイトで注文したために(安かったので…)、リリース日から1週間ほど遅れての入手となった。
どういう順番で聴こうかというのも、実はけっこう考えたのだが、まずは放送でも他のどこでも聴く機会のなかったナンバー、ということで1・2・7・8と聴いた。先に書けそうな7・8番からスタートする。

アンドリス・ネルソンス指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
2017年10月11~15日 ウィーン、楽友協会大ホール(ライブ)
※ライブとしているが、収録日のうち本番があったのは10月12~15日で、11日は恐らくゲネプロ。

Disc 4
ベートーヴェン:交響曲第7番
同:交響曲第8番

Deutsche Grammophon 4837071

WPhBeetCD2.jpg

リリース情報→〈速報・リリース〉CD WPh ベートーヴェン交響曲全集(2019年10月)
演奏会のレビュー→〈公演レビュー集〉WPh ベートーヴェン8・7番(ウィーン/ドルトムント、2017年10月)

使用楽譜は恐らくCBSO時代からのベーレンライター版。ただし実際にどれくらいそれに細かく従うかは演奏ごとに違う。少なくともメトロノーム表記は採用していない。

*  *  *

ネルソンスによるベト7の直近の録音は2016年のBSOとの演奏(→〈WGBH〉タングルウッド BSO ベト7、シベリウスVn協)で、演奏時間を比べると今回の方が全楽章とも30~70秒程度短くなっている。BSOとの方はわりと大らかで優美に仕上げられていたが、今回の演奏は特に両端楽章でもう少し勢いが付き、多少引き締まってはいる印象。ただもちろん所謂ヒストリカル系の方向ではなく、豊潤でパワフルなサウンドである。
半年前くらいにベト7のマーラー編曲版を聴いたが(ユロフスキ指揮ベルリン放送響)、ネルソンスとウィーンフィルのコンビはオリジナル版でもそれに多少近いことをやっているような気がしなくもない。そのマーラー版の感想メモに私は「このアレンジでネルソンスがやったら無茶苦茶くどくなりそう」と書いていたが、今回聴いてやはりそうだろうなと思う。

全楽器がゆったり豊かに鳴らす序奏に続き、主部はBSOの時に比べればテンポが上がり、多少引き締まった印象はある。しかしそれよりも、一つ一つの音の持つエネルギーの高さと言えばいいのだろうか。管も弦も音符のそれぞれがとてもクリアでありながら、非常にしっかりと響かされてもいるために、細部までぎっしりと詰まったような密度の高いサウンドになっている。その中でも音の「形」は単調にならず、メロディだけでなくちょっとした語尾や、旋律裏のモティーフの処理などの丁寧な表情付けが印象に残る。
構えはやはり縦のラインよりは横の流れ、アゴーギクを多用しながら長いフレーズの中で大きなドラマを築いている。その中でどの瞬間にどの楽器が主役、という設計図を常にわかりやすく提示するのはネルソンスの得意とするところ。提示部リピートは無し。

第2楽章はこのコンビによる「歌」の魅力が存分に発揮されている。ここではショスタコにおけるような極度に張りつめた、息詰まるようなピアニシモではなく、弱音においても適度に呼吸を流しながらメランコリックな感情を高めていく。単に大振りで盛り上げているのではなく、むしろ弱音のこまごまとしたモティーフの一つ一つが、思いを吐露する詩句であるかのように繊細なニュアンスを持っているからこそ、ドラマが成立する。溜息のようなヴァイオリンの表情も、裏の低弦も非常に美しい。クライマックスは微かにチャイコっぽくもあるが、感動的だ。

3、4楽章もBSOよりテンポは速めだが、弦楽器が素晴らしく揃っていることもあり、全体の響きはやはり見通しがよく美しい。さりげないモティーフがふっと脇役からメインへ浮かび上がってきたりと、バランスの変化が巧みに演出されている。その中で長いフレーズが常動曲のように繋がっていくのは、熱いパトスというよりも、なんというか躁状態の徹夜のよう(ハイではないのだが、テンションが途切れないというか…)。前半同様、ディテールまでエネルギーのこもった音が並んでいることもあり、聴く方も気が抜けない。
その一体感ある集合体を一つ突き抜けたところに、トランペットがポーンと高く飛んでいくような音を乗せているが、実際にここまで目立つものだったのかそれとも録音の具合なのか、ラジオ放送がなかったのでそこは不明。ティンパニはこのテンポならもっと鋭い古典的な音にしてもよさそうなものだが、この録音ではモダンスタイルでそこそこ残響の多い音を用いている。その分必ずしもリズムがバシッと目立ってこない憾みはあるものの、オケ全体の豊かなサウンドをがっしりと支えるという意味ではやはりこういう音がいいのだろう。

そういえば久しぶりにスコアを見ながら聴いていて、今更なのかもしれないが第3楽章と第九のスケルツォの類似性が非常に目についた。8番におけるティンパニのオクターヴというのはよく言われるが、そのティンパニも含めオケ全体としての直接の先駆は7番だろう。ネルソンスのちょっと躁気味で集中力の高い演奏は、第九のデモーニッシュな焦燥と表裏一体だと言えなくもないのかもしれない。

*  *  *

8番の方はCBSO及びBSOといずれも2014年に演奏した録音が残っている。後者においてネルソンスはベト8を「非常に困難な時期の作品だが、ここでの”闘い”は5番のような攻撃的なのではなくポジティブにそれを超越するようなもの」と語っていた(→〈WGBH〉BSO 悲愴、バルトーク、ベートーヴェン8番)。当時の演奏は私の感想では「エレガントで、闘いというには尖った感じが少ない」とあるが、それに比べれば今回の演奏はなかなかアグレッシヴだったと言える。

7番と同じ日の収録であるはずだが、上記の演奏当時のレビューに「両作品の性格の違いが強調されなかった」というものがあったが、それは確かにそうかもしれない。7番と比べて特にオケを小さくしている気配もない。特に第1楽章は、叙情的部分の表現はさすがだなと思う一方、トゥッティのサウンドはこの曲にしては少し粘りがある感じ。重みをかけて鳴らすところも多い。ただ全体のドラマトゥルギーからすると、ここを土台として続く楽章で変奏していくような雰囲気があるので、これはこれでうまく納まっているようにも思う。提示部リピートあり。

第2楽章もテンポは比較的落ち着いている。これはさすがに軽やかな響きで、叙情的な味わいの弦と、わざとベタ気味に並べるユーモラスなトゥッティとの交替が楽しい。なんということもないモティーフでもいちいち歌にしてしまうのはやはりウィーンフィルと言うべきか。
メヌエットはまたけっこう厚みのあるサウンドで、大御所的と言えばそうかもしれない。こまごましたことはそれほどやっていないが、かなり自由なアゴーギクで起伏をつける。トリオはどの楽器にものびのびと歌わせている。

第4楽章は7番でも書いた、一音一音をしっかり鳴らすエネルギーというのを改めて感じる演奏なのだが、あの弦楽器の速い三連符においてもそれは例外ではない。ベーレンライター版の160などでは物理的にほぼ弾けないと言われる音符だが、ここでのテンポはだいたい136~139くらいで、ピリオドでないオケとしては標準的だろうか。それでもこの細かい音符がいちいちクリアに形になって聞こえるというのは、モダンオケにはなかなかたやすいことではない(調べたらラトルWPhなどもかなり明瞭にやっていたが、あれはまた全体のサウンドの方向性がちょっと違う)。
総じてこのテンポ設定は、最も速い三連符がぎりぎり綺麗に並べられ、副主題を十分に歌うだけの時間も取れる、デュナーミクのメリハリも自然に付けられる、そしてその中でもたつかず焦らずの快速である。つまり譜面の求める要素を可能な限り――メトロノーム表記以外――おろそかにすることなく、しっかりと音にするためのテンポとして的確であり、ネルソンスは数字よりもそういう総合的な形でベートーヴェンに従っている、と言えるのかもしれない。


〈MDR〉ライプツィヒ平和革命30周年記念式典の中継映像(2019年10月)

2019年10月9日、ライプツィヒでいわゆる平和革命の30周年を祝う式典が開催された(→〈ライプツィヒ〉平和革命30周年記念式典のプログラム発表)。式典の様子はZDFでのテレビ中継に加え、MDRでストリーミング中継も行われ、アーカイブとしても見られるようになっている。

30 Jahre Friedliche Revolution - Festakt im Gewandhaus Leipzig
(MDR+、2019年10月9日)

Revolution30MDR.png

2019年10月9日 11:00~ ライプツィヒ、ゲヴァントハウス
アンドリス・ネルソンス指揮
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

メンデルスゾーン:『夏の夜の夢』序曲

1989年の映像
演説
 ライプツィヒ市長 ブルクハルト・ユング
 ザクセン州首相 ミヒャエル・クレッチマー

マーラー:交響曲第1番初稿より「花の章」

民主主義への演説
 連邦大統領 フランク=ヴァルター・シュタインマイアー
 公民権運動家 フライア・クリアー
パフォーマンス『世代間の対話』(?)

欧州の歌
ドイツ国歌

流れとしては、最初にネルソンスとGHOがメンデルスゾーンを演奏し、いったん退場。スクリーンで当時の映像の放映、さらにスピーチがあって、改めてオケと指揮者が入場してマーラーを演奏。そのままオケはステージに残り、大統領その他の演説、会場内に配置された発言者からの短いスピーチによるパフォーマンス(「世代間の対話」Dialog der GenerationenというタイトルはGHOのサイトにあったが、他にソースがなく不明)。最後にもう一度ネルソンスが入場し、欧州の歌とドイツ国歌を演奏。これをもって閉式という流れだった。

ネルソンスは5日までボストンでの演奏会があったので、それからすぐこちらに来てのリハーサルだったことになる。演奏時間は全体からするとごく短いとはいえ、この場でやるには2曲ともそれなりの長さがある。いずれもライプツィヒにとって重要な作曲家ではあるものの、曲自体それほど祝典的とか、狭い意味で革命ゆかりの曲とかそういうわけでもない。聴けて嬉しいけれども、何故この2曲なんだろうなというのは不思議ではあった。花の章は今月後半の定期演奏会の演目だから、ついでというのもあるのだろうが。
メンデルスゾーンの速い部分のアンサンブルなど、完璧とはいかなかったものの、GHOのクリアでありつつ柔和なサウンドを存分にきかせ、マーラーは優美なソロを中心にほどよい甘美さをもって、夢見るような時間を演出していた。後述のように全体としてはけっこう重い内容で気が休まらない中で、この音楽だけは会場にとって癒しの一時になっただろう。

2曲やった後のスピーチその他がおよそ1時間20分に及び、ステージに残るオケは大変だ。ドイツ人というのは概してこういう演説が好きだし、話題も1989年に直接関係することだけでなく、現代の政治社会道徳問題(移民、気候変動etc.)をてんこ盛りにしてくる。それも当然「公に正しいとされている主張」しか語られないから、はっきり言ってあまり面白くはない。会場からのスピーチでもその手の活動家的な人がけっこういたようで、もはや平和革命ほぼ関係ない、というところまで話題が流れ、ようやく最後の歌となって指揮者と追加の奏者がステージへ。

欧州の歌とされているのは第九の「歓喜の歌」で、公式には歌詞はないらしくオケのみの演奏。編曲はカラヤンだそうだ。第4楽章のアレグロ・アッサイ、ヴァイオリンによるテーマの前に短い前奏を付け、次のトゥッティまでの主題2回分を基にしていて、オーケストレーションは元のものをかなり踏まえていると思われる。ただテンポはずっと遅く、トゥッティの弦楽器はレガート、トランペットやティンパニはかなり控えめになっている。会場はこの曲で起立していたので、国歌と同じような扱いなのだろう。フリーメイソンのドイツ語詩でドイツ人作曲、元ナチ党員オーストリア人の編曲によるヨーロッパ賛歌というのも不思議な話だが(他の国はいいのだろうか、これ)。
そのまま続けてドイツ国歌で、こちらは参列者も唱和するのだが、ト長調での演奏だった。一般人が歌うには少々高すぎると思うのだが……。ちなみにハイドンの原曲(弦楽四重奏)がト長調で、ドイツ政府の公式サイトに載っている音源は変ホ長調だった。

ネルソンスは服装も普段と同じものだし、別に何か挨拶などするわけでもない。それこそマズアのような人なら自らマイクを持って政治スピーチするところだろうが、ネルソンスはそういうタイプでもない。もちろん自身が「東」の出身であり、カペルマイスターとしてライプツィヒの歴史への思いというのもあるには違いないと思うが。
ライト付きの譜面台のためいつもよりちょっと低めで、そこは若干やりづらそうにも見えたが、左タクトも交えながら楽しそうな指揮ぶり。花の章では入場してオケに向き直ってからばらばらページをめくって探していたり……。最後の国歌の後、指揮者とオケが立って会場を向いたままなので拍手もそのまま続き、特に閉会のアナウンスもないので微妙な流れ解散という感じになっていた。あれは指揮者が堂々と退場してオケも引っ込めばいいのだろうが、そこまで決められてはいなかったのか。
まあ、現代ドイツ政治における道徳的縛りの強さ――良くも悪くも――を垣間見せるこの式典の中で、マイペースなネルソンスには正直ちょっと和んだ。

それと最初のメンデルスゾーンで気になって仕方なかったのが、彼が右手首に付けている蛍光グリーンのバンド。ものすごく目立つ。

Revolution30Men.png

何かシンボリックなものなのかなと考えたが、どうも「仮」という感じの素材らしく見えるし、他の誰も付けていない。何か字が入っているようでもある。次にマーラーで出てきたときには無くなっていた。あれは一体何だったのだろう。まさか関係者用か何かのを外し忘れてたとか、ないとは思うけれども……。何か意味があったなら知りたい。
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〈Youtube〉BSO わが祖国&ショスタコPf協第1番の動画(2019年10月)

2019/20シーズンに入って、BSOは今まで以上に多くのリハ&本番の短い映像をYoutubeに公開してくれている。10月上旬の定期(→〈WGBH〉BSO ショスタコPf協1番、わが祖国より(2019年10月))からは3本もあったので、別記事にしてみた。特にユジャ・ワンのショスタコはラジオでも生放送のみで、再放送もオンデマンドもなしということなので、少しでも見てみたいという方はこちらで。
コンサートの日程は以下の通りだが、本番の映像はたぶん初日のもの。

2019年10月3~5日 ボストン、シンフォニーホール
アンドリス・ネルソンス指揮
ユジャ・ワン(Pf)
トーマス・ロルフス(Tp)
ボストン交響楽団

リー3世:オリオン星雲の仮庵祭 (Sukkot through Orion's Nebula)
ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番
スメタナ:「わが祖国」よりモルダウ(ヴルタヴァ)、ボヘミアの森と草原より、ブラニーク

まずはユジャ・ワンのショスタコーヴィチ。



相変わらずのセクシー衣装ではあるが、いかにも邪魔そうな長袖とかロングヘアを振り回す人に比べれば、弾きやすそうでむしろいいと思うし、そんなに変顔もしないし、個人的には全然気にならない。演奏の説得力はだけで十分すぎるほどだろう。
次は「わが祖国」より、まずリハーサルの「モルダウ」。



ゆったりとしてメランコリック、ネルソンスは座りながらも既にかなり大きな身振りでリードしている。一同を普段着で見られるのも楽しいものだ。続いて本番の「ブラニーク」。



一応戦闘シーンなのだが、放送の感想にも書いた通りアグレッシヴさはそれほど前面に出さず、重すぎない明るさで仕上げている。モルダウもそうだが、ネルソンスを見ているとけっこう局所的なアクセントの指示があり、テンポの揺らぎも大きい。民族色は控えめながらも情感の豊かさは十分。何度か書いているように、私はネルソンスのドヴォルジャークが大好きで、洗練と純朴なロマンティシズムのバランスがとても気に入っているのだが、今回のスメタナにもそれに通じる魅力を感じる。
それにしても、ユジャ・ワンの1本と、残り2本との再生回数の差には笑ってしまう。さすがのスターである。
posted by Mogu at 23:27Comment(0)動画


〈WGBH〉BSO ショスタコPf協1番、わが祖国より(2019年10月)

※10月2日の記事に追記の上再公開。

2019年10月5日 ボストン、シンフォニーホール
アンドリス・ネルソンス指揮
ユジャ・ワン(Pf)
トーマス・ロルフス(Tp)
ボストン交響楽団

リー3世:オリオン星雲の仮庵祭 (Sukkot through Orion's Nebula)
ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番
スメタナ:「わが祖国」よりモルダウ(ヴルタヴァ)、ボヘミアの森と草原より、ブラニーク

Nelsons Conducts Smetana's Emerald Masterpiece
(WCRB 2019年10月5日 20:00~ライブ)
※再放送10月14日

プログラムノート

BSOのシーズン開幕第3週のコンサート。ジェームズ・リー3世というアフリカン・アメリカンの作曲家による1曲目、仮庵祭はユダヤ教の祭典。ショスタコはユジャ・ワンと、BSOの名手ロルフスのトランペットという期待十分の二人が揃う。ちなみにネルソンスもこの曲を「吹いた」ことがあるらしい(→〈Musik in Dresden〉ゴーリッシュ・ショスタコ賞受賞に際してのインタビュー(2019年6月))。
全曲やれば1曲プロでもおかしくない『わが祖国』だが、今回は2・4・6曲目が取り上げられる。モルダウの表記は迷うところだがとりあえず並記(原語主義を言い出すと、ボヘミアという表記もどうなのかという話になってしまう…)。
放送後数日でオンデマンドが公開されると思われる。放送後に追記予定。


(以下放送後追記)
1曲目のSukkot、仮庵祭というのは10月中旬くらいに行われるユダヤ教の行事。オリオン大星雲というのは、新約聖書の黙示録に神の玉座として出てくるものだという説があるらしい。で、仮庵祭の本来の意味はメシアの再臨を待つことだそうだから、そこで黙示録に繋がっていくのだろう。
ということでテーマ的には宗教色が強いものの、具体的なそのあたりは聴いてもよくわからない。ただ面白い作品ではあって、賑やかなところには近未来映画的な煌びやかさもあり、華麗かつ複雑すぎないリズムで勢いもある。時々瞑想的に静まる部分では打楽器の音色が効果的に使われている。

ショスタコを弾くユジャ・ワンは、映像で見ると個性的な衣装やアクロバティックな指さばきに目をひかれてしまうが、音をじっくり聴いていると非常に丁寧な陰影が付けられ、「為にする」パフォーマンスにはなっていないことが伝わる。高度ではあっても決してサーカスではないこの曲の技巧を、一人芝居になることなく、コンパクトかつ引き締まったタッチで楽しませてくれる。
もう一人のソリストがトランペットのロルフス。ネルソンスもショスタコはさすがに手慣れたもので、速いところはどんどん飛ばし、二人のヴィルトゥオジティを発揮させる。聞くところによればネルソンスにトランペットを「指導」することもあるというロルフスと、リガ時代にこのパートを「吹いた」経験を持つネルソンス、彼らにとってこの曲はスリリングなゲームのように楽しいだろう。
その一方でレントの瞑想的なピアニシモの繊細な響きや、フィナーレの玩具のような俗っぽさなど、様々な表情がそれぞれに巧みで、さすがにネルソンスとのショスタコを4年も吹き続けてきた人だなとも思う。

わが祖国というのは基本的に好きな曲ではあるけれども、冷静に見たらナショナリズムのプロパガンダみたいな作品でもある。小国かつ被抑圧国の看板があれば、ここまで露骨でも無条件で「善」のような扱いになるというのは、若干モヤモヤするところもある(私がこの文脈でいつも悪役扱いになるドイツ・オーストリア贔屓なだけかもしれないが)。
音楽面だけでなく、そんな要素をネルソンスがどう受け止めて、BSOとどういう風にやるのかという興味も少しあった。聴いてみて感じたのは、今回は抜粋で3曲だけというせいもあるが、叙事的よりは叙情的で、描写的というよりはもう少し一般化された心情レベルでの解釈なのかなということだった。全体にディテールを活かせる遅めのテンポの中で、元々の強い地域性は明るく透明感のあるサウンドに昇華され、民族主義に代わって洗練されたノスタルジーが基調となる。

最初が第2曲のモルダウ(ヴルタヴァ)で、ネルソンス自身の意図は分からないが、スメタナ自身が記載しているような具体的な河の情景という感じはあまりしない。ゆったりした中にメランコリックな揺らぎを加えた調子は、現実の風景というより、敢えて比喩的に言えば追憶の中で自由に心のままに、浮かんでは消える思い出と交錯しながら流れていく川のようだ。
色彩は非常に繊細だが、内面化されているからこその細やかさという感じでもある。最後の滝のところを越えたpiu motoで、希望に溢れて駆け出すように一気に頂点へと上っていくさまがとてもいい。ここのヴィシェフラドも現物の遺跡ではなく、いわばヴィジョンだろう。

個別の主役を持たない第4曲には少し地味な印象があったが、暗い伝説の世界へと這い入るような冒頭から、少々野暮ったさを残すトゥッティ、民謡と言うにはいくぶん西欧風味(?)な舞曲と、全体に展開がクリアで、強いローカル色は後退して聴きやすい作りになっていた。最後のポルカはなかなかドラマティックで、ネルソンスのスラヴ舞曲も聴きたいと思った(何曲かはどこかでやっていたと思うのだが)。
ブラニークは伝説にかこつけながらも内容はなかなか物騒だが、同様に被抑圧の小国出身のネルソンスが示す共感は、ここに至ってもあくまで叙情的だ。いい意味で世界の小ささを象徴するような木管楽器のアンサンブルが美しい。情熱はあっても過度に戦闘的にはならないよう、内省的な部分を丁寧に造形し、最後は明るく、どちらかというと軽やかな印象で締めくくられる。

上記ページで1か月間のオンデマンドも公開されるが、ショスタコは権利関係によりカット、再放送にも入らないとのこと(そのため放送時とは番組名も変わったので、本記事の表記も書き換えた。もとはPiano Fireworks with Yuja Wangだった)。
なお、モルダウのリハーサル、ブラニークとショスタコの本番の映像がYouTubeで公開されている。今季はこういうのをたくさん作ってくれていてとても有難い(これはまとめて別記事へ→〈Youtube〉BSO わが祖国&ショスタコPf協第1番の動画(2019年10月))。

posted by Mogu at 22:41Comment(0)放送


〈リリース〉Orfeo CBSO録音全集(2019年11月)

ネルソンスがバーミンガム市響の音楽監督時代、Orfeoレーベルで録音した9枚のCDが、この度ボックスセットとしてリリースされる。10月上旬現在、まだ海外CDショップのサイトにしか情報がないようだ。

Andris Nelsons - City of Birmingham Symphony Orchestra
(Presto Classical)
Andris Nelsons dirigiert das City of Birmingham Symphony Orchestra
(jpc)

アンドリス・ネルソンス指揮
バーミンガム市交響楽団
バーミンガム、シンフォニーホール
2008~2013年録音

Orfeo C987199 2019年11月1日発売

CBSOComplete.jpg

内容は以下9枚の既発CD。録音年月順にはなっていない。

〈CD〉CBSO チャイコ4番、フランチェスカ・ダ・リミニ
〈CD〉CBSO チャイコ5番、ハムレット
〈CD〉CBSO 悲愴、ロメオとジュリエット
〈CD〉CBSO マンフレッド交響曲、スラヴ行進曲
〈CD〉CBSO アルプス交響曲、サロメの踊り
〈CD〉CBSO 英雄の生涯、ばらの騎士組曲
〈CD〉CBSO ツァラトゥストラ、ドン・ファン、ティル
〈CD〉CBSO 火の鳥(全曲)、詩篇交響曲
〈CD/リリース〉CBSO レニングラード (SACD再発)

ネルソンスはこれ以外にもCBSOとの録音をいくつか制作しているが、Orfeo以外なのでここには収録されていない。
一見してわかる通り、ここに揃えられているのは主にチャイコフスキーの交響曲ツィクルス(全曲の予定だったという話もあるが、1~3番は発売されていない)と、シュトラウスの作品集である。現在ネルソンスはBSOとはシュトラウス、GHOとはチャイコフスキーをそれぞれ重点の一つとして取り上げており、前者に関しては後日CD化予定とされている(後者は悲愴のDVDのみリリース済、その他のソフト化に関しては不明)。つまりCBSOでの上記録音から10年ほどが過ぎて、間もなく新天地での新たな演奏が出てくるというタイミングでの再発売となる。

現在でも上記録音はほぼ単独で入手可能なようだし、Naxos Music Libraryにも掲載されているしで、9枚セットの需要がどれだけあるのかはわからないが、個々の演奏はどれも質の高い演奏で、若いころならではの魅力も十分に発揮されている。結果的にBSOへ出世する形で辞任したものの、ネルソンスはこのオケと最後まで良好な関係を保ち、本当に惜しまれての退任だったこともあり、こういうものも良い記念とはなるだろう。ちなみにこの中で、個人的に好きで特によく聴くのはマンフレッド(後年の録音がないという理由もあるが)。